きものでなくてもいい。そやけど、きものでないとあかん。

藤井は油絵が好きで、舞台芸術の世界に憧れる感性豊かな青年だった。父が京友禅の下絵師だったこともあり学生時代から友禅に携わっていたが、大学を卒業後、染匠として京友禅をプロデュースし専門工程を担う職人も一から育てる覚悟で独立した。
創業以来約50年、藤井はその感性を生かして下絵から仕上げまでの製作指揮を担い、40年前からは自家工房で一貫製作を行っている。藤井の工房では一切筆を使わず数10種類の刷毛を使い分けて繊維の奥深くまで染め入れる。地色も線も刷毛で塗り込むことによって、糊伏せをしないで完成させる。
藤井は手描友禅の魅力を後世に伝えたいと願い、2年の歳月をかけて京都の寺院の天井に38枚の友禅画を奉納した。また一般向けの工房公開にも積極的に取り組む。
「今や京友禅の仕事は、きものだけでは成り立たなくなってきてます。そやけどやっぱり、きものでないと表現できない技や美しさもある。京友禅の存続のためには、あらゆる取り組みが必要です」

富宏染工(京都市中京区)